【解説】動物たちの酒盛り

茶碗を叩いたり踊ったり歌ったり、と人間よりも人間らしい姿で酒を楽しむ動物たち。動物を擬人化した浮世絵版画は、江戸時代の後期、19世紀に入って多く描かれた。その中心的な作家だったのが歌川国芳(1798〜1861)だ。「戯画(ぎが)」と呼ばれるこのジャンルは人間社会への風刺の意図をも無論持っているのだが、そんなことは構わず楽しんでほしい。

国芳が大好きだったのは猫。「当柳猫の六毛撰」は六歌仙を猫に見立てた作品だが、動くモノをすぐ追ってしまう猫の習性を表したのが「てふてふてんごう」(僧正遍正)。クスッと笑える楽しさ、面白さがある。判型は団扇絵(うちわえ)。江戸の夏を心地よく過ごすべく、毎年、団扇の形をした版画が刊行され、これを自ら竹の骨に貼って用いたという。「金魚づくし」も可愛らしいシリーズ。音曲を奏でる金魚の傍らでオタマジャクシがダンス中だ。

動物が登場する浮世絵版画には加えて、十二支獣を描いた作品がある(『道外十二支』からしききの牛『道外十二支』ねずみ、『道外十二支』さる)。いずれも12図揃いのシリーズとして刊行されたもので、タイトルに「道外」とあるのは「道化」の意味。同タイトルのシリーズが二種あり、縦構図の作品(『道外十二支』からしききの牛)とその他は別シリーズである。

菅原真弓(すがわら・まゆみ:大阪市立大学大学院文学研究科教授)

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