【解説】酒蔵スケッチ

全国1358の酒蔵をスケッチした。そのうち900蔵は私自身が訪問し、残りは友人が訪問・撮影した写真と、蔵元から提供された写真をもとにした。およそ10年間を要したが、実に楽しい作業だった。

酒蔵をスケッチしようと思った動機を、ここでお話しておきたい。

若い頃から日本酒が大好きだったが、ある時、王冠のデザインの面白さに気付いた。しかも王冠は、私が専門とする表面処理鋼板製である。

これはぜひコレクションしなければと思い、一升瓶を買い漁った。200種類くらいになった頃、直接酒蔵に行かねば集められない状態になった。

ちょうどその頃定年を迎え、始めた調査研究の合間の気休めにと、近くの酒蔵を訪問した。相模原市の久保田酒造である。

行ってみると、大きな木に囲まれた古い蔵があった。これは絵になる風景だと思った。若い頃から絵を趣味としてきたので、酒蔵は非常に面白いモチーフだと気付いたのだ。

そこから酒蔵訪問スケッチが始まった。最初は地元神奈川県である。一日一蔵、直接酒蔵の前で描き、酒を買って帰っていた。

そうして、関東、東北へと次第に範囲を広げていった。

酒蔵の中には、巨木や古木があったり、百年を超える古い蔵が残っていたりして、スケッチの対象として最高だった。

だが、描く際の立地制限が多いため、一枚のタブローとして鑑賞に堪えるものばかりではない。記録性の方を重視して、見ていただくのが良いだろう。

こうして描いた酒蔵の中には、その後廃業した所もかなり出てきた。酒蔵は急速に減少しているのだ。このような状況を、私は誠に寂しく感じている。

だから、これらの酒蔵スケッチは、酒蔵とはこういうものだという姿を伝える記録として意味があると思われる。

酒蔵の持つ趣のある雰囲気と、各蔵による違いを、少しでも感じ取っていただければ幸いである。

画家 加藤忠一

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